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中核市移行は「手段」であり、それによって何をしたいのかが重要に。移行による効果など、特別委員会の視察報告

こんばんは、最年少松本市議会議員の青木たかしです。
本日から9月定例会が開会となりました。議会では、今月から統一タブレットを導入し、実際に議場で全議員がタブレットを使って議案書と決算資料を確認しました。

まだまだ使いこなせない面もありますが、来年2月定例会での完全ペーパーレス化を目指して、議会全体で取り組んでいきます。

先日、中核市移行特別委員会として山形市・川口市に視察に行きましたので、その報告書を添付します。
移行するメリットがわかりにくい中、実際に相談件数が増えていたり、県で行っていたときよりもきめ細かな対応が出来ているという事例もお聞きすることができました。庁舎内に保健所を整備するメリットも確認する一方、二段階設置によってかかる初期経費や関係団体との連携のあり方を検証し、改めて「松本市は中核市に移行して何をしたいのか」を確認することが必要であると感じています。
以下、報告書とその内容です。
 R元行政視察報告書k中核市移行特別委員会委員用様式(PDF: 404.4KB)
1 山形市中核市移行行政視察について
中核市移行の人口要件緩和により、山形市では平成27年2月から検討が本格化した。多様化する行政ニーズや人口減少・高齢化という課題に対応するため、市民福祉の向上と魅力あるまちづくり、県域のリーダー的役割を移行の目的と位置付けている。また、山形市最上位計画である「山形市発展計画」が都市ブランド「健康医療先進都市」の確立を目指しており、その実現に向けた基盤づくりとしてもこの移行を位置付けている。
中核市移行の最大のメリットは県からの権限移譲であり、その他以下の5点を挙げているが、市民向けにその効果・メリットを伝えるのは難しい。
・保健衛生業務のパワーアップ
健康課・保健センター業務と保健所業務の一元化による
・市民サービスのレベルアップ
拠点都市として知名度・存在感が上がり、リーダー的都市として新たな広域連携の手法が広がる
・都市のイメージアップ
・事務手続きのスピードアップ
・行政の透明性アップ
包括外部監査制度の義務化により、行政の透明性がより一層高められる
この4月に中核市移行を果たしたが、精神障害者手帳交付事務について、かかる期間を短縮したという実績はあるが、メリットを実感するのはもう少し先になるという。移行は目的ではなく手段であり、移行後に市民サービス向上のためにどんな取り組みができたかを見ていて欲しいと市民には説明をしているということだった。
移行に伴う組織については組織移行の見直しとして、職員数は91名と算定していた。一番大きいのは保健所業務の要員で、県がどれくらいの人数で該当業務を行なっていたかを基に、山形市のケースに落とし込んで算出している。中核市推進本部・関係部長会議・幹事会・専門部会の4組織で全庁をあげて推進してきた。
保健所関連施設以外に整備した施設はない。食肉衛生検査施設は、市域内にと畜場がある保健所設置自治体が設置することが法律で義務付けられている。ただし、市域内のみならず、県内から持ち込まれるため、1自治体が取り組む事務として適切かどうかは疑問が残る。
全国にある中核市のうち、全体の3分の1程度しか食肉衛生検査業務は取り組んでいない。山形県がもっていた検査所を、施設・部品含めて有償譲渡されたという経過がある。
専門職員のうち、獣医師の確保を特に大きな課題としていた。18名が必要で、県の協力なしにはできないが、市職員の確保も安定化する必要があることから、山形市獣医師職員確保プランを策定した。今のところは計画通りに進んでいる。
市立病院をもっているが、行政職としての薬剤師は初めての採用となる。令和元年度は、主体的に業務を担っている他、山形県からも職員を派遣してもらい、指導や育成についても協力を仰いでいる。
人材確保含め、県の協力体制を得るということが最大の課題であった。中核市移行の要件を満たしているのが県内で山形市のみであり、移行に関わるノウハウも持ち合わせていなかった。権限委譲が進んでいない県とされていたが、県と協力体制を整えることに時間を要した。県の協力体制なしには市の負担を軽減させることはできない。
山形県の決算額をベースとした中核市移行に伴う経費は、基準財政需要額の増加が見込まれたことで、年度で変動はあるが、5,500万円余りの余剰発生という試算となった。令和元年度における予算は5,500万円とはいかないが、800万円の余剰発生となったことから、黒字化という試算に間違いはなかった。
ただし、8億円に上るイニシャルコストが発生しており、これについては影響額に反映されていない。このイニシャルコストを影響額の中でどのように捉えていくかは視点による。
市民理解を得て、市全体で盛り上げて、まちづくり意識の向上につなげることを重視して、丁寧な市民周知・説明に取り組まれている。先行他市に比べてもその点に自負があるということだった。
市報への掲載、ホームページへの記載から始めて、住民説明会を14回で計216名、出前講座を13回で計400名を対象に開催した。
ここで出された質問は、中核市移行のメリットや効果は何かということが多く、動物愛護の関係や、税金が上がることはないかという質問もあったとのこと。
松本市と比べて多くの市民が参加されているように感じるが、市報での告知や、公民館でポスター・チラシを自作しての告知で集め、1会場10〜30人が集まったという。
その他、15分間の市政広報番組、コミュニティラジオでも計12回中核市移行については広報し、ポスター、懸垂幕、のぼりやイベントでのブース設置によるPRも取り組んだ。中核市移行のメリットが全市民に直接的にあるというわけではなく、そこまで注目をされなかったということだったが、これを克服するために数多くこなすことを意識していたということであり、松本市でも市民への丁寧な説明を果たしていく上で参考としたい。
中核市移行を単なる権限委譲にとどめることはやめようということで、山形市として特徴的な施策に取り組めるよう、各担当課から知恵を絞ってもらったという。以下に挙げるものは、県による事業実施との違いを持たせた事業としていて、他市と比べて先行しているわけではないとのお話もあった。
・保健衛生行政の一元化
健康課と保健センターを市保健所の組織として統合・再編し、保健衛生に係る市民サービスを一体的に提供する体制の構築による「健康医療先進都市」の具現化推進
・福祉事務の手続きに必要となる社会福祉審議会設置による地域福祉の市施策の反映や、社会福祉における許認可、指導監査体制の構築
・高齢者福祉と住宅施策の連携強化
高齢者の実情に即した住宅施策に取り組むため、住生活基本計画を作ることとなり、最上位の住宅政策計画を来年度までに策定すると決めている。
・大気汚染常時監視システムの構築
大気汚染の分析をしてホームページに迅速にアップする体制を構築中。
・独自教材による教職員研修の実施
これまで地域ごとの特色を生み出すことが難しかった教育分野において、山形市独自で山形市の歴史・文化や市の魅力を子どもたちに伝えられるようにする取り組みで、山形市独自教材を準備しているところ
・産廃関連業務の一元化
県警察OBを迎えて対応にあたっている。
・高齢者雇用対策
・動物愛護施策の推進
以上。
保健所は今年4月1日に業務スタートしたばかりだが、従前本庁舎内にあった健康課と保健センターを市保健所の組織として統合・再編することにより、母子保健から健康づくり、医療、生活衛生を含めた総合的な保健衛生行政を市保健所が一体的に実施することとした。保健所が担う専門的な業務と山形市がこれまで担ってきた業務を市保健所に集約して、併せて実施することにより、保健衛生行政全体をパワーアップさせることを目指した。
霞城セントラルという官民複合ビルの中で、3、4階に保健所を設置しているが、の設置事業費に計2億2百万円の改修費用を計上することとなった。
官民複合ビルには、アンモニアや塩酸などの有害物質を扱う検査施設を作ること自体が困難であったことから、該当施設は自前では持っていない。独自の検査体制を構築するまでの間は、主に山形県に委託をすることとしている。村山保健所が車で3分のところにあるため、立地面でも大きな問題はないようだ。
2年間で保健所設置に至るまで、総計2億5千万円ほどの経費がかかった。そのうち、オンラインシステムの改修経費が最も大きい割合を占めている。
また、山形市の特徴的施策は、健康医療先進都市という都市ブランド確立を目指そうとしていることにあり、SUKSK生活(食事・運動・休養・社会・禁煙の頭文字をとったもの)の推進運動を展開したり、住民の健康データを科学的に分析し、住民に説明をして、改善の取り組みを促す取り組みも検討している。今年度は減塩・禁煙・口腔衛生対策・腹部肥満に保健所内のシンクタンクとして取り組むこととしている。
動物愛護センターは、保健所から車で20分離れたところに設置した。鳴き声や臭いの問題から市の郊外に設置している。動物愛護精神と適正飼育の普及啓発を行う拠点施設と位置づけ、県内では初のセンター開設となる。中核市で設置されているものの中では最大級となる。設置にはおよそ4億1700万円の経費を要した。
食肉衛生検査所の主な業は、と畜検査業務・衛生指導ならびに衛生監視・食肉輸出の業務・食肉検査データ還元である。これまで県の検査所で行なっていたものを、県から施設を有償で譲り受けた。動物愛護センターの近くに設置されている。
市の郊外に設置されている。
2,504平方メートル
土地建物
古い建物
土地建物で6400万円
備品255万円 103品目 残存価格で買い取らされたようなもの
当初無償譲渡で交渉していたものの、適正価格による有償譲渡ということとなり、必要備品の一部も自前で揃えることとなった。県との連携の重要性について、改めて認識させられた。
県から支援を受ける上で、獣医師は県も不足していることから、その確保と人材育成が大きな課題となっている。
住民に対する周知活動の上で、具体的なメリットは何かということを必ず聞かれるというのはどこの自治体も共通している。山形市では、県の行政区域よりも小さくなるので、情報共有・政策判断は間違いなく早くなることから、きめ細かな対応ができることは実感しているようだった。また、連携中枢都市圏形成を見据えた移行となっている。人口減少社会において、移行によって新たな対策を考える手段が増えることとなる。権限を移譲して、山形市の課題を発見し、どう解決していくかを考えることであり、中核市移行は目的ではなく手段であるということだった。市民に対しては、移行後、市民サービス向上につながるよう尽力すると説明をしてきたという。
コストもかかることであり、松本市においても、中核市に移行して何をやりたいのかということを明確にして、連携中枢都市圏形成の取り組みや市民周知、庁舎内への保健所設置を考える必要がある。
2 川口市中核市移行行政視察について
平成26年2月10日、中核市移行を市長が表明し、「市民の視点に立ったサービスの提供や個性あるまちづくりを推進する」と掲げた。平成30年4月を中核市移行の目標期日として、議会は都市機能・新庁舎建設特別委員会に説明・報告を行い、目標通り移行するに至った。
中核市移行の目的及びメリットは、
・行政サービスのスピードアップ
・きめ細やかな行政サービスの提供
これまでより敷居が低くなったことで、相談業務が県業務のときより増加している。
・市独自の取り組み
市が市域の状況や課題を把握し、地域の実情にあわせた条例、計画など施策を展開できる。
ということである。福祉部は7課体制に追加して福祉監査課を設置。従来の健康増進部を保健部として、直下に保健所を設置した。環境部は資源循環課、産業廃棄物対策課を設置した。移行に向けて28年度から30年度にかけて職員を100名増員した。専門職採用は、立地や人口から、公衆衛生医師以外は確保に苦慮しなかったという。
派遣研修を埼玉県にて計54名行っており、さいたま市、越谷市にも派遣している。移行後の円滑な業務のため、人材育成支援を県に依頼し、21名を育成支援にあててもらっている。埼玉県との連絡調整は計11回行ったということだった。
移行に伴う経費については、施設整備の補助金は整備計画、過去の実績を鑑みて積算し、新たな施策を予算化した結果、歳入、歳出同額の22億3800万円となった。実績額からも、赤字とはなっていない。川口市の場合、イニシャルコストである保健所施設整備費を減価償却として、10年間分割して計上した上での試算となっており、各自治体によって財政影響額の捉え方・考え方が異なっている。松本市においても、二段階設置とする保健所のイニシャルコストをどのように財政影響額として捉えるかが今後検証すべき点である。
市民意識調査では、中核市移行を44%が知っているまたは聞いたことがあるとしており、中核市に移行するという認識自体が低いことがわかった。周知状況の推移では、28年に比べ、29年は若干知っているが伸びたものの、意識醸成を図ることがどこの自治体でも課題となっている。
市の特徴的な施策として、まず県からの移譲事務の充実が考えられる。川口市では、食品衛生監視指導及び感染症対応の強化し、飲食店への立ち入り検査回数を年1100件から1600件へ増やす、特別養護老人ホーム整備促進として、設備の市内調達に関わる補助制度を拡充する、土砂体積に関する規制を強化するなど、政策的な取り組みが見られる。
そして、中核市移行を契機に実施する新規拡充事業としては、胃がん検診の助成対象に胃内視鏡検査を追加、飼い主のいない猫の不妊・去勢手術費用助成制度の創設、市内医療機関マップの作成など、市民や関係者から好評の事業もいくつか見受けられた。
保健所開設については、松本市と同じように県施設を借用して設置をしている。相談業務が保健センター時は1000件だったものが、保健所が入ってから5000件を超えているため、職員も増員した。 医療安全相談については年間150件だったものが540件の相談と増えている。
このことからも、中核市移行によるきめ細かな対応という効果を実感しているということだった。いかにハードルの低い身近な窓口として整備し、市民周知をすることができるかが、移行後の成果を判断する上で重要である。
今後、新庁舎建設を控えており、鳩ヶ谷庁舎から該当部署が引越しをした際には、改修して保健所が入ることとなっている。
また、松本市でも問題となっている野良猫対策の相談が非常に多いとのこと。臭いと鳴き声の対策で、動物管理施設は規模に比べて整備費が多くかかるようになるという。
保健所設置にあたっては、三師会に対しては説明会と講演会を実施した。また、鳩ヶ谷庁舎移行後には、関係団体を含めて整備することも検討しているという。八戸市でも同様の整備方針が示されており、松本市では旧合同庁舎跡地に医師会館が整備されることとなるが、その連携のあり方や残地の活用についても検証することが求められる。
川口市においては、相談件数増という具体的な数値によって、移行メリットを感じられているようである。「市民に身近となる」という一般的に言われる移行効果を判断できる成果指標を用意し、具体的成果をあげられる整備とすることが必要である。松本市は影響額試算の上では財政負担を伴うこととなるため、その実績額を注視するとともに、二段階設置時のイニシャルコストの扱いや費用縮減を精査していくことが求められる。